十四の瞳
こちらでは、今日が3学期の始業式だという学校が多い。私の勤務先もそう。でも、まだ休み(正確には無職状態)。それもちょっと淋しい。
正月気分がまだ抜けてないボーッとしている時に、寒ーい体育館で校長先生のお決まりの話を聞くのは、少し身が引き締まるもの。子ども達もテンションがあがらず、ちょっとよそよそしく振る舞い、新鮮に感じるのもいい。
始業式といえば、去年の4月のことは忘れられない。
去年の3月末で、産休(育休)代替の仕事が一区切りして、私は学校勤めを辞めるつもりでいた。周りの人には、疲労回復のためにしばらく休むつもりと言っていたけれど、家庭の事情などを考えた結果…。先の見通しは何もなかったのだけれど。
4月4日の夜だったか、自宅で体も気持ちも完全オフ状態でダラーッとテレビを見ていた時のこと。1本の電話。
「エトちゃーん、助けてー!」
新任の時、同じ学校の同期採用だった女先生から。何事か?
彼女の学校で、1年間勤める予定だった講師の先生が急にできなくなって、後任が決まらず困っているらしい。教育委員会関係は年度初めですべて配属が決まっていて今更無理だと。後は職員全員で心当たりのあるところに電話するしかなくて、その最中という。彼女には私がしばらく休む予定という噂も耳に入っていたらしいが、もう他に電話するところが思いつかず、私の事情を承知の上で連絡してきたという。
もちろん、断った。それでも、彼女の懇願は続く。どうにか、5月からの人材(他の学校に病休代替で行っている人)は見つかったらしい。後は4月の1か月間。何と明日が始業式と言う。しばらく話した後、泣きそうな彼女の言葉が。
「明日、子ども達は進級して新たな気分で登校してくると思う。どんな先生になるか、誰もが楽しみにしている。それなのに、あの学年だけ担任の先生がいないなんて…。私が1年生の時に担任していた子達なの。みんな、元気でかわいい子。あの子達のことを思うと、かわいそうで…。」
私は、その言葉で落ちた。
すぐに校長先生から興奮した声で「ありがとうございます!助かりましたー。」
約12時間後、私は体育館に立っていた。
「今度新しくこの学校に来られた先生を紹介します。…次に、○○小学校から来られたエト先生です。…」
3年生の担任になった。子ども達は7人。前日からの舞台裏のドタバタなどなかったかのように、穏やかな時間が流れる。
それから1か月。私は田舎の素朴な子ども達と豊かな自然の中で楽しい毎日をすごした。短い間に、授業参観や家庭訪問も経験した。
4月末、「今度こそホントに休みます」と職員に挨拶し、無事終了。
でも、かわいい子ども達とふれあううちに、私は学校勤めをもう少し続けてみてもいいかなと思うようになっていた、しばらく休んで…。
さらに2日後、タイミングよく今の学校の校長先生から電話があり、また学校に勤めるようになって今に至っている。
やはり私は今の仕事が好きなんだと改めて気づかせてくれた、7人の子ども達、保護者や先生方に「ありがとうございました。」


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